どうしてインドカレー店なのか、自分にもわからない。
翌日、元嫁と再交渉。待ち合わせ場所に選んだのは、なぜか嫁の実家近くにあるインド料理店だった。
「スパイスで心を溶かせるかも」とか「異国情緒で和めるかも」――そんな軽いノリだったのだろうか。
結果的に、自分でも理由はよく思い出せない。
「これを直すリスト」をその場で見せた。
前夜、必死でノートにまとめた「修復リスト」を嫁に提示した。
- 家事や育児の分担
- 週末は必ず子どもとの時間を確保する
- 夫婦でカウンセリングに通う
- その他 諸々…
「これが俺の、最後の最大プランだ」と。
それでも、嫁は「絶対に離婚する」の一点張り。
リストをじっと見つめ、しばらく沈黙したあと、嫁は一言。
「……ありがとう。でも、もう絶対に戻れへん。」
このとき、「女性は一度決意したら、気持ちを変えない」という習性を、身をもって理解した。
別居しながら近くで暮らす案も却下。
「だったら、別居でいい。実家近くのワンルームを借りるから。子どもの面倒も見るから」
と提案しても、
「もっと早くそれを言ってくれたら考えたかもしれんけど…もう無理。」
と冷たく返された。
自分の“最大譲歩”も、彼女の覚悟には太刀打ちできなかった。
交渉は平行線――関東へ帰還。
インドカレー店からはしごした喫茶店でも再度粘ったが、議論はまったくかみ合わず。
明日は通常通り、仕事に行かなければばらない。結局、俺は関東へ帰る新幹線の切符を取り直した。
次回予告:遠隔交渉編
物理的な距離ができてしまった今、最後の手段は“リモート交渉”。
LINEメッセージ、ビデオ通話――あらゆるツールを駆使して、離婚を会議できるのか。